北海道の高校入試選抜は個人調査書の評定、いわゆる内申点が大きく関わります。その内申点に誤りがあったことに生徒が気づいて発覚しました。そもそも内申点というものは、選抜の大部分を任せられるほどの公平な尺度と成り得るのでしょうか。

内申点の評定に間違い

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2019年北海道公立高校入試終了後、内申点に大きく関わる評定の記載に誤りがあったことが次々に分かりました。

高校入試の合否にかかわる通知表に誤りがあったことが次々と発覚しました。

誤りがあったのは、オホーツク海側の枝幸町の枝幸中学校の3年生8人の社会科の評定です。
評価が低く記入されたまま高校入試にも使われていたということです。
今月9日、一人の生徒が誤りに気づいて発覚しました。
枝幸中学校は11日、高校に説明をして正しい成績に差し替えるよう伝えたということで、14日には全校生徒の保護者に説明会を開く予定です。
これを受け、道教委が道内すべての中学校に誤りがないか確認するよう指示したところ、道南の厚沢部中学校で生徒2人の評定に誤りがあったほか、稚内中学校でも1人の評定に誤りが見つかり、高校側へ正しい評定を伝え直したということです。
【03月11日(月) 19時19分】

引用元:HBCニュース 高校入試後…合否に関わる通知表の誤り発覚 北海道・枝幸中で生徒気づく 厚沢部中、稚内中でも誤り

生徒が気づいたということですが、合格発表前の絶妙なタイミングでしたね。よく見つけて公表してくれました。この段階で分かって本当に良かったと思います。その後の確認で、他の地域でも芋づる式に誤りが見つかったということ。これでは今まで発覚しなかっただけで、過去にもミスがあったのではないかと勘繰られても仕方がありません。

人はミスをするものとはいえ、受検生の運命を握る評定の記載ミスは、絶対にあってはならないもの。特に内申点の選抜に占める割合が非常に大きい北海道にとっては致命的ミスとなり得ます。

今後このようなことがないよう徹底して欲しいのはもちろんですが、そろそろこの内申点についての考え方を変える時期に来ているのではないでしょうか?

北海道の内申点は選抜に占める割合は大きすぎる

北海道の公立高校一般入試は、内申点の占める割合が非常に大きいのが特徴です。道内の公立高校はすべて、定員の70%を、相関表を用いて当日点と内申点を同等、つまり5:5で評価して選抜します。

各高校の裁量で選抜できる範囲はわずか30%。しかもそのうち15%を内申点をより重視15%を当日点をより重視と決められています。当日の学力点を重視できるのは、定員のわずか15%のみ。

定員の85%が内申点を5割もしくはそれ以上という高い割合で評価されるのが北海道の一般入試です。それは内申点を選抜の資料として絶対的なものとして扱っているからだと想定されますが、そもそも内申点というのは、公平な尺度して扱って大丈夫なものなのでしょうか?

内申点は絶対の尺度ではない

内申点の割合は人気校ほど縮小傾向

長い期間北海道の選抜方法に慣らされた道民の方は北海道の内申点の重視ぶりを「普通のことじゃないの?」と思うかもしれませんが、いえいえ、全国的に見ると全然普通ではありません。

近年では特に進学校、人気校ほど内申の選抜に占める割合は縮小されている傾向にあります。それはなぜでしょう?いくつかの理由のうち一つは、

内申点は選抜の絶対の尺度として扱えるほど公平なものではない

という認識が広がっていったからだと思います。

確かにかつては首都圏でも、高い割合の内申点の評価を基準にしている自治体がありました。私が高校受検をした○十年前もそうだった記憶があります。しかしその後時を経て、内申点の選抜に占める割合はじわじわと減っている傾向にあります。

それは、内申点は絶対の尺度ではないという認識が広がって来たのと、中学生活において内申点を意識し続けなければならないことが教育的に良くないという意識が広がって来たからでしょう。

考えても見てください。いかに絶対評価とはいえ、違う学校で、違う教師による授業を受け、違う定期テストを元につけられた評定の数字が同じ意味をもつはずがありません。

保護者たちの間では、近隣のあの中学は内申点が厳しい、こっちの学校はゆるいなどという噂がまことしやかに囁かれています。

Aランクが過去10年で5%ほど増加しているというデータもあるそうです。年々インフレを起こしている点数が絶対の尺度の筈がありません。

今回のようなミスもあるかもしれません。教師の主観も入るでしょう。トップ校受検に必要な評定考えると、この生徒の評定はこれ以上下げられないなどという気持ちが入らないとも限りません。

若い人の体感

以前、教育関係のバイトをしていたある大学生が、受検を控えた中学3年生にこんなアドバイスをしているのを耳にしたことがあります。

「中学の進路希望調査では、なるべくトップ校を受検希望と言っておくといいよ。そうすれば、先生も低い評定が付けにくくなるから。」

それを聞いた時、「ああ、これが北海道の受検を経験して来た若い人たちの体感なんだな。」と、胸を突かれました。

きっとこの人が中学時代に見聞きしたり、感じたり、体験したりしたことに基づいた後輩へのアドバイスなのでしょう。こういう認識を植えつけられる制度とは、一体何なんでしょう。

思わず「こんなアドバイスをさせる受検制度は本当に○○だな」(どうぞお好きな2文字を入れてください)と感じてしまいましたね。

北海道の場合、内申点は絶対の尺度ではないと認めるところから始めないといけないかもしれませんね。いえ、実はもう既に薄々みなさん気づいていると思いますが…。

他の自治体の選抜方法を見ると

他の自治体のを見ると、内申点は絶対の尺度ではないという認識に基づいて選抜を行なっているところもあります。

千葉県の場合

評定合計平均値

例えば千葉県の内申点の出し方は面白いです。千葉県の内申点は、5段階評価×9教科=45点を中学1年から3年まで等しく加算し、135点満点です。しかし、この数字をこのまま使うことはありません。評定は学校によって甘かったり厳しかったりするものだという前提に立っているからです。

そこで中学校のレベルや先生の主観による不公平を調整するために評定合計標準値というものが設けられています。

評定合計標準値は県により95と決められており、この基準よりも評定が甘い学校の生徒の内申点は点数を引き、厳しい学校の生徒の内申点は点数を足します。

計算式はこうです。

個人の内申点+評定合計標準値-通っている中学の評定合計平均値

例えば、個人の内申点が100だったとします。通っている中学の評定合計平均値が、標準値より高い98だとすると、
100+95-98=97点
となり、元の内申点から3点が引かれます。逆にもし中学の平均値が厳しめの92点だとすれば、
100+95-92=103点
となり、元の内申点から3点が足されます。
基準となる各中学校の評定合計平均値は、毎年受検後に学習成績分布表として公表されます。

千葉県全体の中学の比較はこちらのサイトがわかりやすいので、リンクを貼らせていただきます。

千葉県高校受験情報:千葉県内公立中学校ごとの評定平均値

これを見ると80台から100越えまで、それぞれの中学校によってかなり開きがあるのが分かります。どんなに平均の95に近づけようとしても、先生も人間ですからぴったりにすることが出来ないのは当然ですね。内申点というのはそういうものなのだと思います。

おそらく北海道や他の自治体も中学校ごとに評定の平均を出せば、かなりの開きが明らかとなることでしょう。

決して北海道もこうしろと言っているわけではありません。この千葉のやり方は、どんなに頑張っても通っている中学校の評定が甘ければ内申点を引かれてしまう、というジレンマもあります。

高校の裁量が大きい

そういう問題を防ぐためかどうかは分かりませんが、千葉県の前期選抜は学校の裁量でかなりの部分の選抜方法を決めることができます。北海道のように学力重視は定員の15%などの厳しい縛りはなく、高校の裁量権が大きいのです。

学力検査と内申の順位で選抜する場合もありますが、千葉県の前期選抜はほとんどの場合、学力検査の当日点や内申点そしてその他の記録などの合計点で選抜し、内申点の割合も、ある程度各高校が決めることが出来るようになっています。基本はこのような加点式の選抜です。

当日の学力点500点+内申点135点+他の記録などを加点した総得点

この場合の学力点と内申の比率はおよそ4:1です。北海道の5:5とかなり異なりますよね。

2019年の県立船橋は内申点に0.5を掛けて更に小さくしています。つまり内申点135×0.5=67.5点となり、この場合の学力点と内申の比率はおよそ7:1です。

県立千葉は内申点は加算しません。(参考にはするらしいです。)学力検査500点+作文5点=505点満点で選抜します。

県立千葉は千葉の公立トップ校ですが、内申が多少悪くても挽回できるチャンスが十分あります。AかBでないとトップ校受検さえ出来なくなる北海道とはかなり異なりますね。

東京の場合

また、東京の一般入試の当日の学力点と内申点の割合は7:3です。しかも選抜に用いられるのは中学3年生の成績だけです。やる気スイッチが入るのが遅くても十分挽回できるチャンスが与えられています。

神奈川と埼玉の場合

神奈川と埼玉は、学力点と内申点の割合を各高校で決めることが出来ます。評定だけでなく部活など特別活動やその他の記録など、選抜する資料の配点や扱い方も各校で決め、かなり詳細なものが公表されます。

各校の選抜方法がそのまま、どんな生徒に来て欲しいかというメッセージとなり、受検生も自分に有利になる方法を採用している学校を選べるメリットがあります。選抜方法で学校のカラーが決まっていくという特徴もあります。

内申点が絶対の尺度にはなり得ないという前提

つまり、内申点が絶対の尺度にはなり得ないという前提に立って、評定を調整したり、内申点自体の選抜に占める割合を小さくしたり、高校がある程度自由な裁量で内申を扱えるようにしている自治体もあるということです。

北海道も学力:内申が10:0のところがある、という声があるかもしれませんが、学力重視の裁量はわずか15%しか許されていません。この枠で入学している人はほんのわずかです。残りの85%は内申点が5割以上の比重で選抜されています。自由な裁量にはほど遠いと言わざるを得ません。

内申点重視は中学のため?

着々と内申点の割合を減らしている自治体がある一方、北海道を筆頭に旧態依然の地方もあります。なかなか改革が進まないのはなぜでしょう。

それは内申重視の選抜や、中学に丸投げの推薦入試制度が、中学の指導にとって非常に都合がいいからだと思います。中学校側にとってはとても生徒指導がやりやすいのが、従来型の入試制度です。何十年も北海道の選抜方法が変わらないのはきっとそれが一因でしょう。

以下の記事は福井県の教師の言葉です。北海道の先生の言葉ではありません。高校受験は生徒指導と表裏一体と考える教師がいるという例として福井新聞から引用させていただきます。

参加者の中に中3の娘に高校受験をさせないでフィジーの学校に入学させる母親がいた。その判断を先生側としてどう受け止めるのかを尋ねると、「多くの先生は困惑すると思う。高校入試に向けてクラスみんなで頑張ろうというムードの中で、“異端”がいると全体の気が抜けてしまう。士気に関わる」と語った。例えば受験前にほぼ全員が受ける補習。全員参加が先生側からすれば暗黙の了解だが、受験しない生徒が増えると、全員で受験を乗り越えるというムードが損なわれてしまうという。
「高校受験というものは生徒指導と表裏一体なんです」。教員は力強く言い放った。「『悪いことをすると高校に行けないぞ』っていうのが今も生徒に対する脅し文句。(高校受験をしない生徒が増えると)クラスを先生のコントロール下に置くことができない」と事情を説明した。

引用元:福井新聞高校受験と生徒指導は「表裏一体」
教員が本音告白【ゆるパブ】

そろそろ北海道も再考の時期では

中学受験や大学受験は、本人対受験する学校というイメージですが、高校受検だけは中学校が大きく関わります。その関わりが大きければ大きいほど、保護者や生徒は中学に対し物を言えなくなっていきます。北海道のように中学1年生からの内申点が受検に使われる場合、3年間じわじわと選抜され続けているような印象です。

本当なら、高校受検も本人対受験する高校にできる筈なんですよね。しかし高校受検だけがこのようなシステムになっている。それはおそらく中学校のためです。難しい年頃の生徒たちを管理するためにこのようなシステムが必要なのでしょう。

でもA〜Mのラベル付けは、生徒のためになっていますか?

内申点の学校差に目をつぶっていてもいいのですか?

今後調査書の記載ミスは絶対ないと本当に言えるのでしょうか?

高校受検のシステムを嫌って、中学受験を選択する家庭が都市部では多くいます。北海道ではそうならないと思っている人が多いと思いますが、私立高校無償化の政策が実施されれば、中学受験も負担が軽くなり、北海道の公立高校優位も今後どうなるかわかりません。

北海道の高校入試制度も、そろそろ変化を見据える時期なのではないでしょうか。まずは内申点が絶対の尺度なのかどうか考えるところから始めてはいかがでしょう。