新しい給付型奨学金と大学などの入学金を含めた授業料等減免の制度が2020年度(令和2年度)から始まります。JASSO(日本学生支援機構)では奨学金の予約採用の申し込みが始まり、制度の全体像とその問題点が次第に見えてきました。

新しい制度ということでまだ不透明な部分も多いですが、この記事では2020年度からの給付型、貸与型奨学金についてと大学等の授業料等減免制度について分かっていることをまとめました。不透明な部分は分かり次第随時更新していきたいと思います。

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新しい高等教育の修学支援の概要

2020年度(令和2年度)から給付型奨学金の対象が広がり、大学などの授業料・入学金の減免の新しい制度が始まります。世帯収入の要件を満たしていることが必要となりますが、住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯では大学等の授業料、入学金が大きく減免され、学ぶ意欲があれば給付型奨学金を受けることができる可能性が大きく拡がります。

今回の高等教育の修学支援は、やっと大きく若者への投資に踏み込んだという点で大きな一歩なのではないでしょうか。また若者に限らず幅広い世代への支援となり、少子高齢化への有効な処方箋になりうるものです。

つまり、今まで経済的理由で進学を選択肢にできなかった層の進学を支援するだけではなく、教育費が負担となっていた保護者も、お金のことが心配で子供を持てなかった人も、奨学金返済が負担となり結婚に踏み切れなかった人も後押しする可能性を持った制度だと言えるでしょう。

日本は今まで、若者への投資があまりにも少なすぎました。今はまだ受け取れる対象の世帯年収が限られていますが、これを足がかりに今後対象世帯をどんどん増やしていくべきだと思います。

そのためには間違えても不満を対象世帯にぶつけるのではなく、必要な提言を制度へ要望として訴えることが重要です。この記事ではそのような考え方を踏まえて新しい高等教育の修学支援新制度の内容と課題についてまとめます。

奨学金の種類と新制度

大学や短大、専門学校などへ進学するための奨学金には大きく分けて2種類あります。返済のいらない給付型奨学金と卒業後に返済が必要な貸与型奨学金です。貸与型奨学金には無利子の第一種奨学金有利子の第二種奨学金があります。

2020年度から返済のいらない給付型奨学金の対象が広がります。なおかつ給付型奨学金の対象者は、進学先の学校で減免の手続きをすることで入学金を含めた授業料の減免も受けることができるようになります。なお手続きにはマイナンバーの提出が必要です。

なお、給付型奨学金の対象者が不足分を日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金で補う場合、世帯年収によっては無利子の第一種奨学金は受けられない場合があります。その場合、第二種奨学金を受けることは可能です。

給付型奨学金について

対象の学校

国の確認を受けた大学・短大・高専・専門学校(2019年9月中旬頃に公表)

対象となる人

学力基準と家計基準があります。家計基準には世帯収入の基準と、預貯金などの資産基準があります。

学力基準

(1)高等学校等における全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること
(2)(1)に該当しない場合、将来、社会で自立し、及び活躍する目標をもって、進学しようとする大学等における学修意欲を有すること

学修意欲は高校などで面談の実施やレポートの提出などにより行います。

家計基準(1)収入基準

区分について

世帯収入の要件を満たしていることが条件となります。住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯が対象となり、さらに世帯年収や家族構成などで

【第Ⅰ区分】満額支援
【第Ⅱ区分】3分の2支援
【第Ⅲ区分】3分の1支援

と区分され給付額が決められます。

区分の方法は、以下のようになります。

【第Ⅰ区分】 あなたと生計維持者の市町村民税所得割が非課税であること

【第Ⅱ区分】 あなたと生計維持者の支給額算定基準額の合計が100円以上25,600円未満であること

【第Ⅲ区分】 あなたと生計維持者の支給額算定基準額の合計が25,600円以上51,300円未満であること

支給額算定基準額とは
課税標準額×6%-(調整控除額+調整額)
となります。(100円未満切り捨てです)

自分が給付型奨学金の対象となるか、またどの区分になるかの目安は、日本学生支援機構(JASSO)の進学資金シミュレーターで調べることができます。

モデル世帯で見ると

この計算式だと分かりづらいので、本人と両親(1人が給与所得者、1人が無収入)そして中学生の弟妹1人という4人世帯をモデル世帯として見てみます。あくまでも目安ですがこの世帯構成では給与所得により以下のような区分となります。

【第Ⅰ区分】満額支援  :年収〜およそ270万円(非課税)
【第Ⅱ区分】3分の2支援 :年収およそ270万円~300万円
【第Ⅲ区分】3分の1支援 :年収およそ300万円~380万円

家計基準(2)資産基準

給付型奨学金を受ける本人と、生計維持者の資産額の合計が2,000万円未満(生計維持者が1人のときは1,250万円未満)であることが条件となります。

ちなみにここで言う資産とは、現金やこれに準ずるもの(投資用資産として保有する金銀等、預貯金、有価証券の合計額)です。土地などの不動産は含みません。

給付型奨学金の支給額

上記の世帯収入の区分と、進学先が国公立か、私立か及び自宅通学か自宅外通学かによって、支給額が決まります。通常の課程では毎月振り込まれる金額は以下のようになります。

区分 第Ⅰ区分 第Ⅱ区分 第Ⅲ区分
国公立 自宅通学 29,200円 19,500円 9,800円
自宅外通学 66,700円 44,500円 22,300円
私立 自宅通学 38,300円 25,600円 12,800円
自宅外通学 75,800円 50,600円 25,300円

通信教育過程では次のようになります。振込は年1回となり、国公立か私立か・自宅か自宅外かに関わらず次の金額が振り込まれます。

区分 第Ⅰ区分 第Ⅱ区分 第Ⅲ区分
国公私立共通 51,000円 34,000円 17,000円

参照:JASSO 給付型奨学金案内

授業料等減免について

2020年度からの新制度では給付型奨学金の拡充と共に、進学先の大学や短大、専門学校などの授業料・入学金の減免が受けられる可能性があります。

授業料等減免の対象

対象となる要件は給付型奨学金と同じです。給付型奨学金の採用候補者となった人は進学時に進学先の学校へ減免の手続きをしましょう。給付型奨学金の申請は高校を通じて行いますが、授業料等減免の手続きは進学先の学校で行います。

ただ、給付型奨学金と授業料減免の対象となる学校は、国や自治体の要件確認を受けた大学・短大・高専・専門学校ということになっており、全ての学校が対象となるわけではありません。対象の学校の公表は9月中旬頃の予定です。

授業料等減免額

授業料等減免の上限額の年額の目安は以下のようになります。

国公立 私立
入学金 授業料 入学金 授業料
大学 約28万円 約54万円 約26万円 約70万円
短期大学 約17万円 約39万円 約25万円 約62万円
高等専門学校 約8万円 約23万円 約13万円 約70万円
専門学校 約7万円 約17万円 約16万円 約59万円

住民税非課税世帯の学生は上記の減免額が目安となり、それに準ずる【第Ⅱ区分】の学生は3分の2支援、【第Ⅲ区分】の学生は、3分の1支援 となります。

参照:文部科学省 高等教育の修学支援制度

新しい奨学金と授業料減免のスケジュールは

2020年度の奨学金と授業料減免のスケジュールは次のようになります。

2019年6〜7月ごろ
奨学金予約採用の申し込み
●高校から必要書類を受け取る 申し込み期限を確認
●インターネット(スカラネット)で申し込みを行う
●マイナンバーを郵送で提出する(インターネット申し込み後、1週間以内)
●必要書類を高校へ提出

9月20日
制度の対象となる学校の公表
給付型奨学金と授業料減免の対象となる確認大学等が発表。北海道の対象機関は?

12月ごろ
●採用候補者決定
●高校を通じて「採用候補者決定通知」が交付される

2020年4月
進学
奨学金
●インターネットで「進学届」を提出する
●その後奨学金の振込開始

減免
●進学先の学校に減免の申し込みをする
●学校からの減免認定結果の通知を受ける

新しい奨学金の問題点

多くの人の進学を後押しする新制度ですが、今まで若者への支援が少なすぎた所からのスタートということで、まだまだ十分とは言えません。ここからは新しい制度の課題と問題点を見ていきます。

まだ不透明な部分が多い

消費増税が見送られたら

新しい制度ということでまだ不透明な部分も多いです。一番気になるのは消費税の増税を見込んでそれを財源にしようとしている点です。もし消費増税が見送られた場合どうなるのかについて、文部科学省の高等教育の修学支援新制度に係る質問と回答(Q&A)では次のように書かれています。

Q116 新制度の授業料等減免と給付型奨学金は、2019年10月に消費税率が引き上げられることによる消費税の増収分を財源とするとのことですが、新制度による支援は2020年4月に確実に実施されるのですか。

A116 消費税率の引上げについては、政府としては、反動減等に対する十二分な対策を講じた上で、法律で定められたとおり、本年 10月に現行の8%から10%に引き上げる予定であり、文部科学省としては、これを前提として、来年4月からの新制度の実施に向けて、着実に準備を進めていく方針です。

2018年度の国の税収は60.4兆円となり、バブル期の1990年度の60.1兆円を超え過去最高を更新したそうなので、たとえ消費税が見送られても実現させて欲しいところです。なおこの修学支援制度の所要額は約7600億円。単純計算で2018年度の税収の1.26%ほどです。

すでに制度を見込んで進学の予定を立てている受験生も多いため、万が一にも流れるようなことがないことを祈ります。

対象となる大学は

給付型奨学金と授業料減免の対象となる大学は、2019年9月20日に発表されました。
道内の大学は、1校を除いて対象となっています。

給付型奨学金と授業料減免の対象となる確認大学等が発表。北海道の対象機関は?

対象となる世帯が十分でない

今回の給付型奨学金の対象は、非課税及びそれに準ずる世帯です。残念ながら教育費に苦しむ世帯はもっと広い世帯年収の範囲に及び、その支援は全く足りていません

そんな現状により対象から漏れた世帯からは、非課税世帯ばかりが優遇されているというような不満の声も聞こえてきますが、決してそうではありません。むしろ今まで非課税世帯にさえ支援が行き届いていなかったということに注目すべきでしょう。

とにかく今まで日本では若者に対する投資が全く足りていなかったのです。不満を向けるべきは制度の不備であり、制度の支援対象者ではありえません。

前述したように、少子化の大変有効な処方箋となりうる今回の新制度ですから、対象世帯をどんどん拡充し、富裕層以外は全て対象とすることを目指してもいいのではないかと個人的には考えます。

まずは支援を一番必要とする人へ、それからそれに準ずる人へ、それから…と段階を踏むのはある意味当然のことです。非課税世帯を飛び越えて中間層を対象にするのは不自然です。そんな中役所が中間所得層とのバランスを取ろうと考えるとなんだか不思議なことになることもあります。(後述します。)

今回の制度はあくまでも第一歩とし、日本が若者に投資する国となり、その効果が幅広い世代へ波及していくことを望みます。

給付型奨学金と無利子奨学金は併用できない?

国も非課税ばかりという声に配慮したのか、中間所得層との支援バランスとの観点から、給付型奨学金を受けた非課税世帯はほぼ無利子奨学金(第一種奨学金)を借りることはできないという形で調整を図っています。

Q30 JASSOが実施している貸与型奨学金(無利子、有利子)は、引き続き、利用できますか。新制度での授業料等減免や給付型奨学金と併せて利用(併給)することは可能でしょうか。

A30 JASSOの無利子奨学金について、新制度での授業料等減免や給付型奨学金と併せて利用する場合、利用できる上限額(最高月額)が減額されます。(減額の考え方は【資料2】を御確認ください)。
有利子奨学金については、新制度での授業料等減免や給付型奨学金と併せて利用する場合も、これまで通り利用できます。

出典:文部科学省 高等教育の修学支援新制度に係る質問と回答(Q&A)(資料2)

この調整によると、Ⅰ〜Ⅲで区分された 【第Ⅰ区分】【第Ⅱ区分】つまり両親(片方が給与収入)、本人、中学生の家族4人のモデル世帯で年収約300万円までの世帯は、基本的に第一種奨学金を借りることはできません。

【第Ⅲ区分】の世帯年収約300〜380万円の世帯は利用可能額の調整を受けます。学校の種類と自宅、自宅外などにより、利用可能額は大体13,800〜33,000円となっています。

つまり今後、無利子の貸与型奨学金(第一種奨学金)を満額受けられるのは、モデル世帯で年収約380〜800万円の世帯がメインとなるのでしょうか。(世帯年収は家族構成によって異なるのでここでは両親、本人中学生の家族4人世帯を目安としています。)

【第Ⅰ区分】【第Ⅱ区分】で第一種奨学金を借りられるのは、給付型奨学金の対象とならない(機関要件を満たさない)学校へ通う学生のみになるということでしょうか。その辺りの記載を見つけることができず曖昧なのですが、この調整と大学の機関要件が設定されたことで、家計や成績だけでは自分がどの奨学金が対象になるかの予測が難しいという状況が生まれてしまいました。

非課税世帯は第二種奨学金に?

【第Ⅰ区分】【第Ⅱ区分】の非課税とそれに準ずる世帯の人は、給付型奨学金で足りない場合はわずかなケースを除き有利子の貸与型奨学金(第二種奨学金)を受けることとなります。給付型奨学金で学費等を全て賄えればいいのですが、おそらくそうできる対象者は少数で、貸与型奨学金と併用せざるを得ない人も多いことでしょう。その場合、卒業後は有利子の奨学金を返還していくリスクも考えなくてはなりません。

ただし、区分については世帯構成や世帯収入など個々のケースが絡みますし、進学先も予約採用時点では未定です。自分が給付型の対象だと思っても、予約採用の申し込みの際は個人で判断するのではなく、給付型、第一種、第二種ともに希望し、JASSOの審査を待つ方が良さそうです。

なぜなら前述したように、自分がどの奨学金の対象となるかは、合格し進学先が決定するまでよく分からないからです。資料を読み解く限り、非課税世帯でも進学先が機関要件を満たさない場合は給付型の対象にはなりません。そうなると第一種奨学金の対象になりそうです。機関要件を満たす学校へ進学する場合は、給付型の対象となり第一種奨学金は調整を受けるでしょう。つまり合格して進学先が決まるまでは判断が難しいということです。

この辺りははっきり分からない部分が多いので、詳細が分かり次第更新したいと思います。

非課税だと所得連動返還方式は使えないという矛盾

非課税とそれに準ずる世帯の人が第一種奨学金を受けることができないとなると、世帯年収約300万以上(上記モデル世帯)の人しか所得連動返還方式は使えないという矛盾を抱えることになります。

所得連動返還方式とは、非正規雇用などで卒業後十分な給料の上昇が見込めない人を救済するためにできた貸与型奨学金の返還方法で、所得に連動して返済金が変動する方式です。第一種奨学金の返済でのみ選択でき有利子の第二種奨学金では選ぶことができません。

卒業後、何らかの原因で思うように所得が上がらなかった人の返済を支援するために作られた返還方式のはずですが、今後は事実上世帯年収300万以下の非課税及びそれに準ずる世帯ではほぼ選択できないことになります。これで本当に必要な人に支援が届くのか、懸念されます。

第二種奨学金でも所得連動返還方式が使えるようになるといいのですが、今後どうなるかは不透明です。

貸与型奨学金について

貸与型奨学金は進学後に本人が月々受け取り、卒業後に返していくものです。日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金には以下のものがあります。

第一種奨学金(無利子)

対象

学力基準(5段階評価で3.5以上)と家計基準があります。ただし住民税非課税世帯や生活保護受給世帯の生徒なたは児童養護施設入所者等の社会的養護を必要とする人については、学力基準や家計基準に満たなくても申し込みができます。

貸与金額の最高月額

第一種奨学金の最高月額は

国公立大学 自宅:45,000円 自宅外:51,000円
私立大学  自宅:54,000円 自宅外:64,000円

ですが家計やその他の区分により月額は変わります。

返還方式

所得連動返還方式か定額返還方式かを選ぶことができます。

第二種奨学金(有利子)

対象

学力基準(申し込み時までの全履修科目の学習成績が平均水準以上であるなど)と家計基準があります。

貸与金額

基本的に2万円〜12万円(1万円単位)で選択します。

返還方式

定額返還方式となります。「返還誓約書」提出時に毎月均等に返還する月賦返還か、ボーナス払いを併用する月賦・半年賦併用返還かを選択します。

利率について

有利子なので利息が付きます。年利はJASSOの利率のページから確認できます。

今後のこと。はじめの一歩であってほしい

これまで経済的理由から大学や専門学校などへの進学が選択肢としていなかった人にとっては、学ぶことを後押ししてくれる給付型奨学金と授業料等減免の新制度です。

しかし課題もあります。今後第一種奨学金の位置付けは、給付型奨学金併用の金額調整により、低所得者のものではなく中間所得者層向けのものへなっていくのでしょうか?そうなると奨返済の際に所得連動返還方式を使うことをできるのも、その層のみということになってしまいます。

ケースによってですが、卒業後の返還の難しさは中間所得者層より低所得者層の方が大きくなる逆転現象も考えられます。

あくまでも今回の制度をはじめの一歩として、改善を重ねていってほしいと願います。1人でも多くの学びたい人が、経済的理由で進学を諦めることなく進路を選べるといいですね。新しい制度ということでまだ分からない部分も多い為、この記事は新しい情報が分かり次第更新していく予定です。よろしくお願いいたします。

参照:文部科学省
日本学生支援機構(JASSO)