札幌のオンライン授業事情

StartupStockPhotos / Pixabay

長引く緊急事態に外出禁止、そして休校。保護者も子供達もそしておそらく先生方も、ストレスは溜まる一方。誰のせいでもないと分かっていても辛い状況が続いています。

今回の状況を見ると、残念ながら札幌はおそらく、日本全体の中でもリスクはトップクラスの地域。緊急事態宣言が解除されて、通常の生活に戻ったとしても今後も警戒が必要であり、状況によってはまた休校や分散登校といった対策が必要となるという覚悟しておいた方がいいのでしょう。

そこで必要なのが、休校や分散登校となっても、子供達の学びを止めない仕組み、オンライン授業です。

今回の休校で札幌の小・中学校や高校はオンライン授業の事情はどのようになっていたのでしょうか。

GIGAスクール構想

そもそも札幌市では、2月に教育費補正予算案を発表し、国の「GIGAスクール構想」に伴い、教育委員会管理事業に教育の情報化推進費として予算を充てています。

校内通信ネットワーク整備事業のほか、児童生徒1人1台のタブレット端末の整備事業費に19億8200万円を充て、2020年度は、先行して小学5・6年、中学1年の約4万4000人の児童生徒用にタブレット端末機器を配備する予定となっていました。

札幌市、小中学生に1人1台ずつタブレット端末を支給すると発表

しかし今回の休校時に、該当する学年の子供達に端末が配られたという話は聞こえてきません。タイミング的にちょっと間に合わなかったようです。

その後、国もGIGAスクール構想の前倒しを決めています。この構想ではもともと児童・生徒「1人1台端末」の2023年度の達成を目指していましたが、今回の事態に早急な整備の必要性を認め、2020年度補正予算案で小・中学校と特別支援学校での1人1台端末の早期実現のために1951億円を計上しました。

つまり、今年度中の全小・中学生への「1人1台端末」に、国として動き出したということです。今回の状況を見れば、一部の学年だけではなく、全ての児童生徒にオンライン授業が必要だということが明らかです。これは歓迎すべき方針だと言えるでしょう。

ただ実現にはハードルがあります。まず、現在世界的に端末や部品のニーズが高まっている中、おそらくこれだけの規模の調達が可能なのかという問題もあります。

次に自治体の問題。国の補助金を得るためにはまず自治体負担分を予算化しなければならないようです。国の補助額は、パソコン一台につき4万5000円。実際に進めて行くには自治体の力が不可欠です。

今回の休校が解除されても、いつまた同じような状況になるか分からない今、1人1台端末の実現が待たれます。

2020年春、休校中の小・中学校の休校中の取り組みは

今回の休校でも、オンライン授業の必要性は明らかで、札幌市の小・中学校でもそれに向けて努力していました。

ただ実際は、学校HPで出される課題や札幌市教育委員会からの臨時休業中の学習課題や取り組みシートを家庭でダウンロードして、プリント学習を行うという学習方法がメインとなっていたようです。

5月半ばになると、動画の配信やテレビを利用した「こども応援プロジェクトTV」が始まり、なんとか子供達に学校からのメッセージを届けようという気持ちが伝わってきました。

中学では、学校によって取り組みが違うようですが、学習を支援する動画を配信したり、家庭のインターネット環境についてのアンケートを経て、双方向のオンライン授業を行おうとするところも出てきています。

家庭によって通信環境や子供が使える端末の有無などが様々な中、試行錯誤が続いているようです。

休校中の高校のオンライン事情

休校中の高校は、各学校によって事情が様々です。

私立高校の中には、1人1台端末を既に実現しているところもあります。例えば、北星学園大学附属高校では、2019年から1人1台Surface goを使用しているようですし、東海大学付属札幌高等学校では5月に1年生にもiPadが送付されています。

また中には、4月から双方向のオンライン授業を実現できていたという環境のところもあるようです。札幌新陽高校では、Chrombookが1人1台配られ、1年生も4月からオンライン授業を実現させることができたそうです。

札幌新陽高校:新陽高校は今日も授業中!コロナ休校はありません。

公立高校も頑張っています。家庭のインターネット環境についてのアンケートを経て、動画配信や、双方向のオンライン授業を実現させているところも多いようです。

HBC:オンライン授業の評判上々 北海道立高校が試行錯誤

オンライン授業の実際

うちの子供の高校でも5月からオンライン授業が始まりました。

生徒と先生だけの入学式。その後数日で休校となり、休校当初は高校生になった実感もないまま自宅で課題をやるだけでした。

しかし担任の先生から定期的に電話があり、その後ネット環境のアンケートを経て、生徒がそれぞれ持っているスマホや端末を利用してオンライン授業が始まりました。

初めは朝のホームルーム。しかしそれだけでも効果は絶大だと感じました。明らかに生活にメリハリが出て、それまであやふやだった学校への帰属意識が出てきたようです。

その後、短い時間ですが授業が毎日入るようになり、自分なりに課題を進めているようです。やはり学校の力は偉大ですね。

ただトラブルもありました。生徒が各自用意できる端末や通信環境はバラバラ。生徒全員が同じ端末を持っていれば、設定やトラブルシューティングの指示もシンプルなのでしょうが、色々な状況で起きるトラブルを先生に伝えるのも難しく…。

うちは当初Google ClassroomからGoogle Meetにトラブルで入ることが出来ず、試行錯誤を繰り返しました。使っている端末や通信環境により状況が違ったようで、クラスの全員がオンライン授業に参加できるようになるまでは、結構時間がかかったようです。

Google ClassroomからGoogle Meetに入れない時の対処法

その後も突然回線が切れたり日々いろいろあるようですが、この短い期間で様々な環境の生徒たちに対して、授業を行うまで持っていった先生方の努力には頭の下がる思いです。

民間のサービスを導入する自治体も

先生方が、全ての授業をオンライン化する労力を思うと、既にある民間のサービスを借りるというのも一つの方法なのかもしれません。

愛知県では、授業動画の配信サービススタディサプリの導入を決めました。

愛知県教委は6月から、学習の遅れを取り戻すため民間のオンライン学習支援サービスを導入する方針を固めた。全ての県立高校と特別支援学校計180校の児童・生徒12万5千人が対象。県教委は現時点で6月から学校再開の方針で、当面の自主学習で使うほか、感染拡大の第2波が来て再び休校となる事態にも備える。

導入するのはリクルート社の「スタディサプリ」。小学4年から大学受験を対象にした豊富な授業動画を視聴できる。国語、数学、理科、社会、英語といった科目でレベル別などの講座があり、来年3月まで、県立校の児童・生徒は料金負担なしで使える。

スタディサプリは多様で質の高い動画のラインナップを持っています。主要科目の小・中学校が採用している教科書ごとに合わせた動画や、各地域の高校入試に合わせた動画まであり、どの教科書を使っていても単元ごとにぴったりの動画を見つけることが出来ます。

また学年を超えた動画も見ることが出来るので、分からないところまで遡ったり、反対に得意な教科はどんどん進めたりすることもできます。

ただ動画配信なので、個人で通信教育として受講するには意思と計画性が必要となります。そのネックの部分を学校が担いペースを作るということなのでしょうか。

札幌でも学校経由の特別価格で紹介している高校もあるようですが、全員にというわけではないので、それを課題にしたり、休校の埋め合わせに使うことは難しいと思います。

愛知のように自治体ごと民間の力を借りることを決めれば、今後分散登校や休校がまたあったとしても、先生方の負担も軽減できるのかもしれません。

主要5教科を民間サービスなどで補うことができれば、動画やAIにはできないアクティブラーニングや実技や専門科目、生徒による様々な活動に時間や労力を割くことが出来ます。今回の休校で、そのような学校の勉強以外の力がいかに大きいかを改めて感じました。

おそらく今年度は、国も自治体も、学校も家庭も民間も全ての持てる力を結集した工夫が必要な年となるのでしょう。しんどいですね…。ただロストジェネレーションを2度と作らないためには、今、出来ることを探していくしかないのでしょう。

子供の学びをストップさせない仕組みが欲しいですね。