2020年2月20日、文部科学省から「令和2年度国公立大学入学者選抜確定志願状況」が発表されました。また、河合塾の大学入試情報サイト、Kei-Netでは国公立大志願状況が掲載されました。
この記事はそれらと主要私立大の志願状況を元に、2020年の北海道内の主な大学の志願状況・倍率が昨年とどう変化したか、今年の傾向をまとめます。
全国の2020年大学入試の傾向
2020年の受験を取り巻く背景
2020年の大学入試の傾向を見る前に、今年の受験生を取り巻く背景を考えてみます。
・少子化と共通テストを見据えた浪人の減少で、志願者数は少ない。
・センター試験最後の年である。
・特に昨年の身の丈発言あたりから、来年から始まる大学入学共通テストの迷走ぶりに振り回されてきた。
・私立大学は、定員超過是正の影響で、ここ数年難化傾向。模試の判定から結果が読めない状況もあり。
・センター試験が主要科目で難化。平均点が下がった。
このような背景から、2020年の大学受験傾向は、以下のようにならざるを得ませんでした。
・来年から制度の切り替わるため浪人は回避傾向、安全志向が高まる。
・AO・推薦入試の人気
・センター方式の出願が減少傾向か
次に私立と国公立の志願者数を前年と比べます。
私立大学の傾向
私立大学の志願者数は減少。前年度割れが目立つ。特に文系の減少が顕著。理・工は、志望者が増加。
私立の医学部は、前年度比96%。医学部の不正入試が響いたか。「薬」は前年比88%。「医療技術」は前年比86%と大きく減少。
国公立大学の傾向
国公立の志願者数も前期日程で前年比94%と減少。過去20年で最少となった。
後期日程は前年比92%。前期以上の減少。
特に現象が目立つのは、社会科学系と医療系。理工学系は、減少幅は小幅。
北海道内の傾向は?
北海道の傾向は、必ずしも全国と同じではありません。私立と国公立を順に見ていきます。
北海道の私立大学
全国的には前年比で減少が目立つ私大ですが、北海道では状況が違うようです。
3/13現在の、kei-net 「主要私立大 大学別志願状況」によると、北星学園と北海学園の2020/2019(前年比)の状況は以下のようになっています。
大学 | 方式 | 2020/2019 |
---|---|---|
北星学園大学 | 一般計 | 109% |
センター計 | 105% | |
北海学園大学 | 一般計 | 119% |
センター計 | 96% |
この北海学園と北星学園大学に関しては、特に一般入試は前年より志願者が大きく増加しています。
これらの大学は、道内(札幌)の大学を志望する地元の学生が第一志望にする場合もあると同時に、道内の国公立大学受験者の私立の併願先として選ばれることが多い大学です。
地元志向の強い学生の受け入れ先としての人気が、志願者増として現れているのかもしれません。
ちなみに北海道医療大学は、一般が前年比93%、センターは101%でした。
北海道の国公立大学
kei-net の大学入試情報では、 2020年度国公立大出願状況 などを見ることができます。これらのデータを元に、北海道の国公立大の2020年の状況を見ていきます。
北海道でも安全志向か
kei-netの国公立大大学別志願者数から、前年度比が減少した大学、増加した大学を見て見ます。
●前年度比減少
北海道の国公立大で、前期日程の志願者数が前年と比べてで減少したのは
旭川医科大 76%
小樽商科大 84%
札幌市立大 85%
北海道大 94%
札幌医科大 95%
北見工業大学 97%
北海道教育大 98%
●前年度比増加
北海道の国公立大で、前期日程の志願者数が前年と比べてで減少したのは
釧路公立大 166%
室蘭工業大 149%
名寄市立大 122%
帯広畜産大 121%
●前年度と同じ
公立はこだて未来大 100%
ちなみに公立千歳科学技術大学は、今年度(2020)から分離分割方式となりました。前期日程と中期日程での一般入試を採用しています。
北海道大学
北海道大学では、前期日程が前年比94%と6ポイントの減少。
ただし2019年と2020年の倍率を比べると、増加が目立つ学部、学科もあります。
医学部医学科 3.2倍→3.8倍
総合入試文系 2.9倍→4.1倍
反対に減少が目立つのは、
文学部 3.9倍→3.1倍
教育学部 3.4倍→2.9倍
法学部 3.0倍→2.0倍
など。
後期日程は前年比95%と減少しています。
医学部と医療系
全国的には医療系の志願者が減少しているという2020年の状況ですが、北海道の状況は必ずしもそうとも言えないようです。
前述の通り、北海道大学の医学部医学科、前期日程の倍率は、前年度と比べると
3.2倍→3.8倍
と上がっています。
旭川医科大学の医学部医学科、前期日程の倍率は、前年度と比べると
9.3倍→7.0倍
と下がっていますが、依然高倍率です。
札幌医科大学は、2019年の医学部の前期日程倍率は、4.0倍。2020年は医学部出願枠の名称が変わり、医(一般枠)と医(先進研修連携枠)に。倍率はそれぞれ、2.9倍と4.8倍になっています。
医学部以外の医療系に関しては学科によって様々です。前期日程、前年度の倍率と比較します。
北大の保健-看護学は、2.5倍→2.4倍。
旭川医科大の看護は、3.0倍→2.4倍。
札幌医科大の看護は、2.0倍→1.7倍。
名寄私立大の看護は、3.4倍→4.9倍。
その他の保健医療系は、上がっている学科もありますが、理学療法と作業療法の志願者数は減少傾向のようです。
それ以外の道内国公立
今年は道内の国公立の受験でも安全志向の傾向が見られたようです。私立の定員厳格化、センター試験の最終年という、今年の受験生を取り巻く状況を考えると仕方がないことですね。
しかし、全国の国公立の前期日程の志願者数が、前年比94%と減少に対して、道内の国公立大学全体では、前年比102%と増えています。
これは公立千歳科学技術大学が公立化して初めて分離分割方式の入試を行ったことや、室蘭工業大学の倍率が昨年と比較してかなり高くなったことが影響しているようです。
室蘭工業大学は、令和元年度から工学部ではなく理工学部として募集を始めています。2019年の理工学部 システム理化学(昼間)の前期日程の倍率は2.7倍でしたが、2020年は5.7倍と、志願者数がほぼ倍増しています。
また、経済学部の単科大学、釧路公立大学も大幅に志願者増。前期日程の2019年の学部計の倍率は6.3倍でしたが、2020年は10.4倍に。
保健福祉学部を持つ名寄市立大も前期の学部計が、3.0倍→3.6倍に。ただ学科によりばらつきがあり、看護、栄養、社会保育の倍率は上がっていますが、社会福祉は下がっています。
帯広畜産大学は、前期よりも、後期の倍率の増加が目立ちます。後期日程の2019年の学部計の倍率は4.3倍でしたが、2020年は12.1倍に。
システム情報科学部を持つ公立はこだて未来大学は、前期は昨年度と同じ3.8倍でしたが、後期の倍率が大きく変わりました。後期日程の2019年の学部計の倍率は6.3倍でしたが、2020年は2.5倍に。
これは、今年から公立となってはじめて分離分割方式を行なった、公立千歳科学技術大学が中期日程を採用したことと関係するかもしれません。
公立千歳科学技術大学は前期日程の2学部計の倍率は1.7倍と低めでしたが、中期日程の倍率は10.5倍に。後期ではなく中期日程を採用した戦略が、工学系の併願先のニーズとマッチしたようです。
まとめ
制度が変わる節目ということで、受験生にとっては浪人がしにくいプレッシャーの中、ただでさえ厳しい受験でした。
さらに直前になって、北海道大学、北見工業大学、旭川医科大学、北海道教育大学の一部の学科など、後期日程の受検方法を見直さざるを得なくなる大学もあるという異常事態。
このような状況の中で今年の受験生は、本当に素晴らしい頑張りを発揮したと思います。そして結果がどうであれ、この状況でこの時期を乗り越えたということを、誇っていいと思います。
この経験はきっと糧となり、今後の人生の中で活かされていくでしょう。異例ずくめの状態がまだ続きますが、どうぞ新しい環境の中で自分らしさを発揮し、時代を引っ張って行ってください。