2018年3月、スポーツ庁は中学の適切な運動部の活動の運用へ向けて、運動部活動のガイドラインを公表しました。それに基づき、道教委と道も北海道の部活動の方針の策定を進めていましたが、2019年1月30日道の教育委員会で了承され施行されました。

ちなみにこの方針は、運動部だけではなく文化系部活動にも適用され、道立だけではなく札幌市立や私立校も対象です。2019年度から順次適用される北海動の部活動の方針とは、どのようになったのでしょうか。

北海道の部活動の方針

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結論から言うと、国の指針に基づいていますがスポーツ庁のガイドラインよりも緩和されている印象です。基本的には以下を原則とします。

中学校の部活動の方針

①休養日は週2日以上(少なくとも平日1日、土日1日以上。年間104日以上)
②活動時間は長くとも平日2時間、休業日3時間
③部活以外も多様な活動を行えるよう、ある程度長期のオフシーズン設定

これだけなら国のガイドライン通りなのですが、学校現場の要望を受けて以下のような例外規定が盛り込まれています。

大会を控えた1ヶ月以内に限り、
④休養日は平日に週1回(年間52日)以上、週末・祝日に月1回(年間12日)以上。学校閉庁日9日間を合わせ年間73日以上
⑤活動時間は長くとも平日3時間、休業日4時間(1週間16時間まで)

大会やコンクールが立て続けにあるような場合は、しばらくこちらの例外規定で運用が続くということですね。

高校の部活動の方針

高校の場合は通年で④と⑤で運用されるようです。つまり、

・休養日は平日に週1回(年間52日)以上、週末・祝日に月1回(年間12日)以上。学校閉庁日9日間を合わせ年間73日以上
・活動時間は長くとも平日3時間、休業日4時間(1週間16時間まで)

となります。高校の指針の緩和の理由は、部活動を生かして進学や就職をする生徒がいることや、生徒による自主的な活動が多様化していくこなどが挙げられています。

参照:道教委サイト 道立学校に係る部活動の方針

北海道新聞(2019/1/31)

方針を受けて

当初公表されていた国のガイドラインより緩い運用とはなりましたが、これまでよりは休養の下限の基準がはっきりし、とにかく毎日部活ばかりでそれ以外何もできないというような状況は改善しそうですね。

ただし、罰則などはないようなので、実際の運用がどうなるかは未知数の部分もあります。特に高校の場合は方針が緩和されているので、この方針の通りでもかなりしっかり部活動に取り組めるスケジュールに見えます。

しかしこれまで、休日はほとんどなく活動も朝から晩までというのも大げさではないような部活があったのは事実ですので、それに比べれば最低限の休養を確保できる方針となっていると言えるでしょう。

部活動は変わるか

部活の取り組みの要望は様々

この部活動の問題は難しいですよね。スポーツも文化系の活動も、将来をそれに賭けているようなスタンスの人もいれば、嗜む程度で楽しく活動したいという人もいます。大会結果が将来に直結するような人から見れば、毎日部活に取り組むのは当たり前だと思うかもしれません。一方、部活以外の活動もしたい人にとっては、週数回の休養日は当然あるべきだと思うでしょう。

どちらの気持ちもわかるだけに、何が正解なのかは分かりません。本来なら、部活内に色々なスタンスの人が混在するのは当然のことだと思います。個々それぞれの取り組み方が認められればいいのでしょうが、現実には、大会で上位を目指す部活はそれなりの取り組みが全員に求められます。

結果、厳しい部活とラクな部活という棲み分けができてしまって、その活動内容に興味があっても厳しさや拘束の長さが自分に合わないと入部に踏み切れないという人も多いのが実際のところでしょう。

そのスポーツや文化活動がどんなに好きでも、スタンスが合わなければその部活から去らなければならないと言う現状の部活動の有様は、その活動の裾野を広げると言う意味ではちょっともったいないような気がしてしまいます。

ゆる部活とは

最近では、ゆる部活と呼ばれる厳しさとは無縁で楽しむことが主体の部活動も増えて来ているそうですね。

「体力向上部」「軽運動部」。最近、聞き慣れない運動部活動が生まれている。勝つことを目指さず、体を動かすこと自体を楽しむ部だ。時間も短く、厳しさとは無縁。「ゆる部活」とも呼ばれている。

 東京都世田谷区のある中学校の軽運動部は、活動は月2回ほど。リズムにのってパンチを繰り出すボクササイズや、2本のロープを使って跳ぶダブルダッチ、チアリーディング、ミニテニス、バランスボールの体幹トレーニングなど、異なる種目を楽しむ。

 これなら、「運動は苦手」「うまい下手は関係なく、気持ちよく体を動かすだけでいい」という生徒も入りやすい。文化部と兼ねる生徒も多いそうだ。

引用元:AERA dot.「ゆる部活」て何? 続々設置の背景にある子どもたちの声

体力向上のためにも、こういう部活はいいですね。運動部に全てをかけることはできないけれども、楽しく体を動かしたいというニーズを満たしてくれます。北海道は雪国なので仕方がない部分もありますが、特に体を動かす習慣のある生徒とそうでない生徒の2極化が激しい印象があるので、気軽に運動に取り組める部活のニーズはありそうな気がします。

部活動の方針が変わったことで、今までの当たり前が当たり前ではなくなり、今後は色々な取り組み方ができる時代に変化していくのかもしれません。一生懸命やりたい人も、楽しくやりたい人もどちらのニーズも満たせる方法を試行錯誤していけるといいですね。