受験生のための「後期の授業の実施方針等に関する調査」の見方
大学の対面率
2021年11月19日、見方によっては大学の”体質”を知るためのヒントになるのでは?と思う資料が、文部科学省のサイトで発表されました。「大学等における2021年度(令和3年度)後期の授業の実施方針等に関する調査および学生への支援状況・学生の修学状況等に関する調査結果について」
です。
これは令和3年10月7日の時点で、大学の後期授業実施方針などについての質問に、全国の大学がどう回答したかの結果をまとめたものです。”見方によっては”と書いたのは、過去の経験から、大学の回答については鵜呑みにしてはいけない部分があると感じているからです。
例えば全体の集計を見ると、約97.6%が「半分以上」約83.2%は「7割以上」を対面授業で行う予定となっており、おそらくこの部分がクローズアップされて報道されるのではと推測します。しかしこの1年半の大学の方針の変わり方を見ていると、大学の申告する「予定」に報道する価値を感じません。ですのでこの記事ではスルーします。
また大学のいう「対面率」は高学年の少人数のゼミも1つの授業として集計しているようで、昨年の調査でも大学の発表と低学年の実感に隔たりがあることが分かっています。
つまり、対面率50%と発表された自分の大学の結果を見て、実際は殆ど通えていない大学1年生が驚き呆れるということが多発しました。
全ての大学とは言いませんが、実際の大学1年生のスケジュールを聞くと大学発表の割合の更に半分以下という印象でしたので、これから大学生になる受験生は、大学の申告する対面率を鵜呑みにしないほうがいいでしょう。
そういう事情から、大学の発表が対面率3割以下という割合の場合、低学年の学生は殆どキャンパスに通えていない可能性もあります。
緊急事態宣言明けの大学の姿勢は
大学の申告を鵜呑みに出来ない理由は多々ありますが、この文科省の調査は「10月7日時点で志望の大学が実際にどういう状態だったか」ということを知るには良い指標となりそうです。
10月7日といえば、全国的に急速に感染状況が収束し、9月末には全ての緊急事態宣言が解除されたという時期です。
当然、高校・中学・小学校・幼稚園・保育園に在籍している子どもたちは普通に通えている状態で、大学も通常に戻ったような報道が前面に押し出された時期でもありました。
毎日通学している高校生にとっては、この時点で通えていない大学生がいるなど思いも寄らないかもしれませんね。
私が住む札幌でも新規感染者は一桁、あるいは二桁という推移で、この状態で今通常に戻さなければ一体いつ戻すんだと思いましたし、実際多くの大学で対面率が上がりました。
ですから、この10月7日という時期に対面率が3割以下と回答した大学というは、もはや感染云々というより、その大学の運営の「体質」の問題と思われても仕方がないのでは…。そしてこの時点での大学の回答は、受験生が大学の体質を見極めるヒントになるかもしれません。
そこで、この調査で「10月7日時点で対面率3割以下」と回答した大学を地方ごとにピックアップしてみます。ほぼ遠隔、全面遠隔と回答した大学も含め、こんなにあるのかと驚きました。
今後対面を拡大する方針の大学もあるようですが、大学の考え方や体質を垣間見るヒントとして、この時点で対面に移行出来ていないということだけに焦点を当てています。
オンラインを好む受験生にとっても、高校と同じように大学にも通いたいと感じている受験生にとっても参考となると思いますので、受験の方針を決める際のヒントとして活用してください。
2021年10月7日時点で対面率3割以下の大学
北海道
全面遠隔
公立はこだて未来大学(公)
ほぼ遠隔
小樽商科大学(国)
3割対面
札幌医科大学(公)
札幌市立大学(公)
公立千歳科学技術大学(公)
東北
全面遠隔
秋田公立美術大学(公)
ほぼ遠隔
尚絅学院大学
秋田大学(国)
山形県立米沢栄養大学(公)
山形県立米沢女子短期大学(公)
福島工業高等専門学校(高専)
3割対面
東北学院大学
東北文化学園大学
国際教養大学(公)
関東
全面遠隔
関東学園大学
東京福祉大学短期大学部
十文字学園女子大学
文教大学
埼玉女子短期大学
中央学院大学
麗澤大学
東京福祉大学
東京家政学院大学
東京都市大学
嘉悦大学
有明教育芸術短期大学
ほぼ遠隔
茨城大学(国)
足利大学
足利短期大学
駿河台大学
秋草学園短期大学
流通経済大学
城西国際大学
敬愛大学
千葉商科大学
東京基督教大学
お茶の水女子大学(国)
文京学院大学
目白大学
上智大学
昭和女子大学
聖路加国際大学
東京女子大学
二松学舎大学
武蔵大学
明治学院大学
LEC東京リーガルマインド大学院大学
専修大学
横浜国立大学(国)
関東学院大学
フェリス女学院大学
横浜商科大学
横浜薬科大学
東洋英和女学院大学
湘北短期大学
3割対面
群馬大学(国)
前橋工科大学(公)
国際武道大学
江戸川大学
東京大学(国)
電気通信大学(国)
東京海洋大学(国)
跡見学園女子大学
大妻女子大学
東京慈恵会医科大学
東洋大学
日本大学
星薬科大学
明治大学
立教大学
国際仏教学大学院大学
情報経営イノベーション専門職大学
駒沢女子大学
国際基督教大学
津田塾大学
和光大学
杏林大学
東京工科大学
恵泉女学園大学
東京富士大学
デジタルハリウッド大学
白梅学園大学
グロービス経営大学院大学
大妻女子大学短期大学部
目白大学短期大学部
創価女子短期大学
中部
全面遠隔
なし
ほぼ遠隔
信州大学(国)
静岡文化芸術大学(公)
静岡福祉大学
愛知学院大学
椙山女学園大学
東海学園大学
3割対面
新潟医療福祉大学
富山県立大学(公)
長野大学(公)
情報科学芸術大学院大学(公)
岐阜協立大学
名古屋市立大学(公)
星城大学
愛知大学
愛知大学短期大学部
近畿
全面遠隔
大阪経済大学
大阪経済法科大学
常磐会学園大学
常磐会短期大学
近畿大学短期大学部
ほぼ遠隔
京都大学(国)
佛教大学
大阪教育大学(国)
大阪府立大学(公)
大阪工業大学
摂南大学
大阪大谷大学
関西大学
近畿大学
甲南女子大学
神戸女子大学
芦屋大学
神戸医療福祉大学
神戸女子短期大学
奈良教育大学(国)
3割対面
鈴鹿医療科学大学
滋賀文教短期大学
京都府立医科大学(公)
京都ノートルダム女子大学
立命館大学
桃山学院大学
大阪産業大学
帝塚山学院大学
阪南大学
神戸国際大学
関西学院大学
天理医療大学
中国・四国
全面遠隔
倉敷市立短期大学(公)
叡啓大学(公)
鳴門教育大学(国)
ほぼ遠隔
鳥取大学(国)
就実大学
就実短期大学
福山平成大学
高松大学
高松短期大学
3割対面
県立広島大学(公)
福山大学
山口大学(国)
東亜大学
徳島大学(国)
九州
全面遠隔
鹿児島大学(国)
ほぼ遠隔
福岡女子大学(公)
福岡大学
筑紫女学園大学
長崎純心大学
九州ルーテル学院大学
大分大学(国)
宮崎公立大学(公)
3割対面
九州工業大学(国)
日本赤十字九州国際看護大学
別府大学
別府大学短期大学部
鹿屋体育大学(国)
沖縄工業高等専門学校(高専)
まとめ
この記事は大学の回答をまとめた文科省発表の調査をもとに、緊急事態宣言が解除され、その他の学校や幼稚園の子どもがを取り戻した「2021年10月7日時点」で大学が現実にどうだったか、という一点にフォーカスしています。
今後対面へ向かう方針の大学もありますが、あくまでも10月7日時点にどうしていたかをチェックすることで、受験生向け資料では分からない大学の実際を知りたいと考えたからです。
大学の姿勢が垣間見えるので、慎重な姿勢の大学を好む方、反対に対面率が少ない大学での一人暮らしはリスクが高いと考える方、それぞれのニーズに合った大学を選ぶ参考となるのではないでしょうか。
なお、この時点で全面対面に踏み切っている大学についてはこちらの記事でまとめました。
それぞれの大学の今後の方針などは、文部科学省のサイトでご確認ください。
参照:文部科学省サイト「大学等における2021年度(令和3年度)後期の授業の実施方針等に関する調査および学生への支援状況・学生の修学状況等に関する調査結果について」