北海道の百人一首は木製
世代を越えて、沢山の人から愛されている、小倉百人一首。
小学校でも、積極的に暗記を奨励したり、競技に取り組んだりするところもあって、小学生にも根強いファンがいますよね。
札幌でも冬になると室内遊び用に、各クラスにトランプなどと一緒に百人一首セットが設置されたりするようです。(すべての学校がそうかは分からないのですが。)
ところが、この百人一首を見て、
自分の知っている百人一首じゃない!
と驚く内地からの転校生がいるとか。
実は、北海道の百人一首は木で出来ているんです。
板かるた・下の句かるたと呼ばれている
板かるた、下の句かるたなどと呼ばれ、選ばれている歌は普通の百人一首でおなじみの百首ですが、ルールは似て非なる別物。
一般的な百人一首が、上の句から歌をよんで、下の句を書いた札と取るのに対し、読み手は下の句だけしか読みません。
例えば、「吹くからに 秋の草木のしをるれば むべ山風をあらしといふらむ」という歌だとしたら、「むべ山風をあらしといふらむ」の部分、下の句だけを読んで、とる人はその下の句を書いた木札を取るのです。
そして、この木札も内地のものと一味もふた味も違います。
一般的な百人一首の取り札って、整然と3行にひらがなが並んでいますよね。
ところが、板かるたの取り札の文字は、とても芸術的。漢字、かな混じりで、文字の大きさもまったく整然と並んでいません。非常に達筆な方が書いたのだと思われますが、最初の数文字だけ大きくて、あとはささささーっと流れるような筆致で小さく書いてあるんです。
とても味わいのある取り札です。
ルールについて
取り方は、細かいルールはいろいろあるのですが、基本的には、札を50枚ずつ分けて3人ずつのチーム戦で戦います。取れる札は自分の札と敵の札で、仲間の札は取りません。敵の札を取ったら自陣の札を一枚送ることができます。
読み方も独特の節をつけて読まれ、通常の百人一首の読み方とは異なります。所変われば品変わるといいますが、本当にそうですね。
上の句を含めた歌を憶える必要がないので、小さい子にも簡単にできるかといえば、札の文字の漢字と独特の筆致を読むのが結構難しいと思います。しかし、歌を記憶していなくても取ることができるという意味では、年齢によるハンデは通常ルールに比べると少ないかもしれません。
大会では、子どもたちの熱気あふれる様子が見られます。
「ちはやふる」でも登場
競技かるたにかける青春を描き、数々の漫画賞も受賞した人気コミック「ちはやふる」でも、北海道の下の句かるたが少しだけ登場します。ただしこの作品で主人公たちが取り組む競技かるたは、通常の百人一首ルール。上の句を記憶することは必須です。
そんな競技かるたに打ち込む主人公、千早ちゃんが創設した瑞沢高校かるた部ですが、2年目の入部希望者の新一年生は、ほとんどがイケメン部長、太一目当て。ただその中で貴重な、かるたが好きで個性的な入部希望者の新入部員の一人が、北海道出身の男子生徒だったんですね。
彼は北海道での下の句かるたの経験があり、かなり実力もあったと自信を持っています。しかし、いかんせん下の句かるたと内地のかるたのルールは別物。その違いに当初かなり苦戦してしまいます。でも北海道で培った彼のかるたへの情熱は本物で、兄弟思いの彼は小さな兄弟からのエールもあり、内地の競技かるたにもひたむきに取り組んでいくことに…。
札を取った後に気合を入れるため床を叩くなど、異なる部分を紹介するように取り上げられていますが、かるた愛はどちらにも共通するものだと改めて気付きます。「かるたが好きだ」「得意だ」という気持ちを武器に戦う彼に、道産子の意地と「好きこそものの上手なれ」という言葉を実感します。
そんな彼が初登場するのは9巻。
下の句かるたは北海道の伝統的な遊びであり文化なので、守っていきたいですね。